麗澤大学特任教授 三潴 正道
「中国人って、本当に人の心をつかむのが上手なのね」
「相手が予想した一歩、二歩上をいくのがコツなんだ」
「例えば?」
「お客様が帰るとき、日本人は一戸建てなら玄関先で送り出すのがふつうだろ」
「中国人だったら?」
「門の外、その先の曲がり角、バスの停留所、電車の駅まで送る」
「すごい!」
「マンションだったら、エレベーターで降りて、マンションの出口まで送るのは当然さ」
「日本人でもそうすることがあるけれど、相手が遠慮するからね---」
「中国語でも『留歩、留歩』(もうそこまででいいですよ)っていうけどね」
「やっぱりね」
「すると送る側は『不送、不送』(送りませんよ)って言う」
「じゃあ、日本人と同じじゃない」
「そこからが違うんだ」
「どこが?」
「口では『不送、不送』と言いながら、絶対足を止めることはない」
「言行不一致の典型だわ」
「それで相手は感激する」
「日本に来て爆買いする中国人、お土産が大変なんだよ」
「お父さんが『日本人も海外旅行がブームになったときは同じだった』って」
「一つ違うところがある」
「何が?」
「君が海外旅行に行ったとする。職場の同僚にお土産買うよね」
「ええ、一応はね」
「一人に一個だろ、お菓子かペンダントか---」
「まあそうね」
「お菓子をあげて、ペンダントもあげて、さらに化粧品もあげたら?」
「それはやりすぎよ。相手がびっくりするわ」
「そこが狙いめさ。『そこまでしてくれるの?』って相手は感激する」
「なるほどねー」
「それが本当のもてなしだよ」
「そうなんだ、思い当たることが幾つもあるわ---」
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年8月30日