麗澤大学特任教授 三潴 正道
「中国人って根っからの商業民族なのね」
「そう、それを知ったらいろんなことがわかるよ」
「例えば?」
「日本人の先生から面白い話を聞いたことがある」
「へえー、聞かせて」
「中国語の文法の本を出版したんだって。そしたら、印刷会社から謝りの電話が」
「どうしたのかしら」
「すみません!表紙のデザインの“福”の字が逆さまでした。すぐやり直します!」
「まあ、大変。その会社、大変な損害ね。先生はなんて返事したの?」
「当然、“ちょ、ちょっと待ってください。逆さまでいいんです!”だよ」
「えっ、逆さまでいいの?」
「きみ、ずいぶん長く中国に居て気が付かなかった?
「何を?」
「家の門でも中華料理屋でも逆さまの字を何度も見たはずだよ」
「そういえば、“福”や“春”の字が逆さまだったわ」
「だろ、ちゃんと意味があるんだよ」
「どんな意味?じらさないで教えてよ」
「逆さまって中国語でなんていうかい?」
「逆さまねえー」
「例えば逆さまに数えるのは“倒数”だろ」
「ええ、そうね」
「その“倒”は何声?」
「えーと、“倒れる”の場合は3声だけれど、この場合は4声ね」
「正解!君は優秀だ!」
「からかわないで!4声だからどうだっていうの?」
「“倒”の人偏を取った“到”も同じ発音だよね」
「ええ、そうね。ふーん、わかった!」
「やっぱりねー。君は賢い!そうさ、語呂合わせで縁起を担いでいるんだ」
「“福”を逆さまにすれば“福到る”ってわけね」
「数字の話でも語呂合わせが出てきたけれど、ここでもおんなじさ」
「日本人もめでたいときは“タイ”を食べるし、お正月には昆布巻きを食べるの」
「なんで昆布巻きなの?」
「“喜ぶ”のコブ」
「へえー、じゃあ、殴られてコブができても喜ぶの?なんてね。ごめん、冗談冗談!」
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年11月11日