斉藤さん
気仙沼観光コンベンション協会に勤める斉藤千津さん。4歳と2歳の男の子のヤングママさんだ。彼女は7人家族、夫、2人の子ども、義理の両親と弟と暮らしている。気仙沼の大火災が発生したところに家があった。震災が発生したとき、彼女は集金の途中だった。大きな揺れで車のハンドルがきかなくなった。その直後、ものすごい勢いで下水の水が海へ引いていき、「これは(津波が)来る!」と思った。そばにいた小学生4人を連れ、近くの高台にある小学校へ送り届けた後、港に近い会社に戻った。津波が来たときの土ぼこり、クラクション、家が引き倒されていくバリバリという音、すれちがった人たちの顔が今も脳裏から離れないという。震災直後、家族はばらばらになったが、不思議と行く先々で再会したという。夜になると雪が降ってきた。震えが止まらなかったが怖いのか、寒いのかわからなかった。数日して、家のあった海辺に行って見ると、すべてが焼けてなにもなくなっていた。聞こえるのはガスボンベの爆発する音だけだったという。
大勢の親しい人を見送った。家族が全員無事だった自分にはなすべきことがあると、人生観が変わり、以前と比べて「おせっかい」になったと力強い笑顔を見せてくれた。