吉林省農安県龍王郷に住む農民の梁淑華さん(62)は近頃、焦りを感じている。旧暦の正月が過ぎると、二人の息子が出稼ぎに行ってしまったが、春の耕作が始まろうとしている現在、十数ムーの畑を耕す人がまだ見つかっていないのだ。
糧食生産による収入も少なくない時代になったが、都市部の方が若者にとっては魅力的だ。梁さんは、「二人の子供は都市部に引越し、市民の暮らしを楽しもうとしている」とやるせない思いで語った。
梁さんの戸惑いは珍しいケースではない。近年、中国の都市化の加速と出稼ぎ労働者の増加に伴い、多くの農民が都市部に進出している。
中国国家統計局が発表した報告書によると、中国の都市化率は2011年末までに51.3%に達し、全国の出稼ぎ労働者の数は2億5000万人超に達した。
都市化・工業化の急速な推進を受け、中国の糧食需給バランスが逼迫している。国務院発展研究センターの韓俊副主任はその原因について、「急速な都市化が大量の良質な畑を消耗すると同時に、農村の働き盛りの労働力が大量に流出している。人件費が続騰し、糧食生産の後継者が不足している。また経済の高度発展と所得増に伴い、中国人の飲食習慣に変化が生じている。多くの家庭では、肉類の支出が主食を上回っており、家畜の飼料の需要が激増している」と分析した。
中国社会科学院がこのほど発表した2012年版「都市部・農村部一体化白書」は、「農村部の労働力の都市部・工業部門への移転に伴い、労働力はすでに糧食生産を制約する重要な要素になっている」と指摘した。明日の糧食生産は誰が担うのか、という問題の解決が当面の急務となっている。